こんにちは けいこぶ(@kei_cob) です。
俳優の新井浩文(あらいひろふみ)が主演の映画「善悪の屑」が、主演である本人の逮捕により公開中止となりました。
残念ながら、公開の中止が決定しました。
当初より応援いただいておりました皆さま、本当に申し訳ございません。https://t.co/lopXquB2Y4— 映画『善悪の屑』公式 (@zenkuzu1) 2019年2月8日
この公式Twitterは一気にニュースで広まり、「映画の違約金は5億以上」「新井は自己破産するしかない」などとさまざまな憶測がネット上でなされています。
思わぬ形で世に広く知られることになった「善悪の屑」ですが、実は漫画としては結構古いって知っていましたか?
漫画雑誌ヤングキングで連載開始がされたのは2014、連載が終了したのが2016年です。
しかも、単行本第4巻は不健全図書(有害指定図書)に指定され、現在でも紙版は入手困難となっています。
漫画雑誌ヤングキングは高校生以上を対象とした青年漫画が主ではありましたが、青年漫画としては過激・残虐すぎる描写が規制の理由でした。
一言で漫画の残虐性を表すならば…
「闇金ウシジマくん」の残虐描写をさらに強めた感じです。
「闇金ウシジマくん」もかなり過激な描写は多いと思いますが、なんだかんだいって表現が省略されている部分も多いです。
一方、「善悪の屑」ではそういった過激な描写に制限がありません。
これは「闇金ウシジマくん」が金貸しの立場なのに対して「善悪の屑」は復讐(ふくしゅう)屋としての立場なので仕方がありません。
復讐屋として裁きを加えるのに、肝心の復讐シーンがカットされていればリアルさに欠けますね。
個人的には好きな漫画ではありますが、不健全図書に指定されても仕方がない部分もあります。
今回は、そんな過激な復讐漫画「善悪の屑」をご紹介します。
あらすじ
1人の女性が古本屋「カモメ古書店」を訪れます。
女性が古本をレジに持っていき「この本、おいくらですか?」と尋ねます。
するとレジにいた男は「いくら出せるの?」と聞き返します。
普通のやり取りなら「500円くらい?」と本の値段を返しますが、この女性は「お給料の3ヵ月分で」と答えます。
するとレジにいた男は女性を奥の部屋へと案内します。
奥の部屋にはセミロングの男が寝転んでいました。
そう、この2人こそ復讐屋。
レジの男が鴨ノ目 武(かものめ たけし:カモ)とセミロングの男が島田 虎信(しまだ とらのぶ:トラ)です。
相談者の女性は7年前、未成年だった男に強姦され、そのときに1歳半だった息子をマンションの4階から投げ捨てられて殺されています。
しかし犯人は未成年、たいした罪にも問われず7年後に釈放されてしまいます。
自分の息子がもういないのに犯人がのうのうと生きているのが許せない。
女性は復讐屋の2人に「復讐の代行」を依頼します。
そして2人は犯人だった男の居場所をつきとめ、殴りかかります。
犯人だった男はバタフライナイフで応戦します。
この男は7年前に女性を襲ったときもバタフライナイフで女性の腹を刺しています。
結局、犯人だった男はカモとトラによってとらえられ、倉庫に監禁されます。
そこで、被害者の女性が見ている前でさまざまな復讐を実行します。
しかしその途中、被害者の女性が犯人だった男と話をさせてほしいと願い出ます。
そして犯人だった男に自分の息子を失ったことに対する恨みを打ち明けます。
ここで復讐される理由を悟った男は「毎日、後悔してます…だから助けて」と女性に謝ります。
「後悔」
その言葉だけを聞きたかった女性はカモに「もういいです」と言います。
カモは犯人だった男に「被害者の女性の前に二度と姿をあらわすな」と伝えます。
それにコクコクとうなずく男。
カモは被害者だった女性を返します。
その後、「マジで心から反省したよ」「これからはボランティアとか人助けをしたい」と命乞いをする犯人にカモは言い放ちます。
(出典:漫画「善悪の屑」1巻より)
「おまえさんまさか 本気で生きて帰れると思っていないだろうね?」
そうしてカモは犯人に最後の復讐を実行します。
そんな2人の復讐屋の元には、これからもさまざまな事件の被害者が復讐を依頼しにやってきます。
オススメポイント
「善悪の屑」のオススメは、なんといっても現行の法律では裁ききれない悪に対して「やりすぎるまでの復讐」をやりとげてくれるところです。
最初の犯人にしても、仮に監禁から釈放しようものなら、まず間違いなく被害者の女性を再び襲おうと思っているでしょう。
そんな犯人に対して完膚なきまでに復讐をなしとげる様は、読み手に納得のいく爽快感を与えてくれます。
法律的にどうなのかといえば完全にNGです。
日本の法律では仇討ち・かたき討ちは禁止されています。
しかし、現在の法律では裁ききれない悪は確実に存在しています。
最初の話では未成年、その次の話ではイジメっ子に隠蔽した教師が出てきます。
その後も登場するさまざまな屑たちを、あれやこれやと成敗していく復讐屋の2人は、ある種の「水戸黄門」に通じるところもあります。
あきらかにダークヒーローではあるものの、どこか真の正義ではないかと思わせられるのも事実です。
不健全図書に指定された有害指定漫画でもある
冒頭でもふれましたが、「善悪の屑」の第4巻は東京都青少年の健全な育成に関する条例「第8条1項第1号」に該当する「不健全図書」に指定されています。
それゆえ、Amazonでの取り扱いは行われていないうえ、書店でも見つけることがほぼ不可能な状態が続いています。
電子コミックでは普通に読めますので、一番てっとり早く読むには電子コミックが良いでしょう。
「善悪の屑」の規制すべき内容の是非に関しては「こちら」にある自主規制団体からの聴き取り調査結果がわかりやすいかと思います。
自主規制団体からの聞き取り調査結果を簡単にまとめると「残虐すぎるのでNG、私刑を肯定している」という規制賛成派と「そこまで残虐ではない。誰もマネしようはしない」という規制反対派とに分かれています。
ちなみに、不健全図書の定義は次の通りです。
地方自治体それぞれが制定する青少年健全育成条例(または青少年保護育成条例)に基づき、「18歳未満の青少年の健全な育成を阻害する」として不健全(有害)指定され、青少年への販売、配布、閲覧が禁止される図書類(書籍、雑誌、文書、図画、写真、ビデオソフト、コンピューターソフト、その他の電磁記録媒体など)。地方自治体ごとに基準を定めているが、概ね「内容が著しく性的感情を刺激し、甚だしく残虐性を助長し、又は著しく自殺もしくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるもの」(東京都の同条例)。
(出典:コトバンク「不健全図書」より)
不健全図書に指定されている漫画の一例
ちなみに、不健全図書に指定されている漫画は意外に多いです。
例えば…
「バトルロワイヤル」
これは当時はあまりにも有名になった漫画です。
当時はグロ描写の漫画は今ほど多くはなかったため、バトルロワイヤルは社会問題にまで発展しました。
私個人の意見としては、バトルロワイヤルの本質は残虐性ではなく「世論が誘導された末路にはあんな世界もあるんだよ」といった集団による歪んだ価値観の恐さを語っていると思います。
ですが世間からは「残虐!とにかく残虐!青少年の育成に良くない!」と非難され続けていました。
まあ…グロ描写はアリアリですので否定はしません。
「多重人格探偵サイコ」
コイツも結構ヤバめのグロ描写が多い漫画です。
バトルロワイヤルと違って、この漫画はタイトルにもあるサイコパスに通じるグロさがあります。
「善悪の屑」「バトルロワイヤル」が風刺的な意味合いを持つ漫画に対して、「多重人格探偵サイコ」は純粋に漫画として成り立っていると思っています。
最後は…ちょっと急展開でビックリしましたが。
「善悪の屑」の登場人物の過去
1巻ではカモの過去が語られます。
(出典:漫画「善悪の屑」1巻より)
このシーンは、トラが復讐を実行するカモに対して「依頼人の息子と自分の娘を重ねてるんやろ」と残虐行為に対して口出した場面です。
その瞬間、カモはブチ切れトラを押さえつけます。
このカモの行動には悲しい過去があり、このことは1巻で語られています。
また、2巻ではトラの過去が語られます。
「善悪の屑」には続編がある
「善悪の屑」は不健全図書に指定された影響を受けてか否か、全5巻にて完結しています。
そしてその後…
「外道の歌」として第2部が連載されています。
こちらはAmazonでも取り扱いが行われており、今のところ「不健全図書」には指定されていません。
「善悪の屑」を読んでおもしろかった人(というより読むのが難しいですが…)は、「外道の歌」も引き続き読まれてみてはいかがでしょうか。
書籍情報
タイトル | 善悪の屑 |
作者 | 渡邊ダイスケ |
単行本巻数 | 全5巻(完結)⇒続編あり |
連載雑誌 | ヤングキング |
出版社 | 少年画報社 |