こんにちは けいこぶ(@kei_cob) です。
「はちみつを含んでいますので、1歳未満の乳児には与えないでください。」
日常食品の中には、このような注意喚起が書かれている商品があります。これ、本当に守らないといけない注意事項なのをご存知でしょうか。
1歳未満の乳児にはちみつを与えてしまうと、乳児ボツリヌス症という病気にかかってしまうことがあります。聞きなれない言葉かもしれませんが「乳児ボツリヌス症」はとても恐い病気です。
場合によっては死に至ります。実際、2017年には日本で初めて乳児の死者が出てしまいました。
一昔前に生レバーの食中毒が話題になった時期がありましたが、乳児に生レバーを与えてしまうのをイメージしていただけるとどれだけヤバイのかイメージしやすいかと思います。生レバーによる食中毒は腸管出血性大腸菌ですので菌の種類は異なりますが、腸内で繁殖して毒素をまき散らす点ではボツリヌス菌も同じです。
そんなボツリヌス菌と乳児ボツリヌス症について詳しく解説していきます。
これを機に「乳児にはちみつは絶対に与えてはいけない」と覚えておきましょう。
■目次■
ボツリヌス菌とは?
ボツリヌス菌とは非常に毒素の強い菌の1種で、ボツリヌス食中毒という病気を引き起こします。この中でも乳児に発生する食中毒は乳児ボツリヌス症と呼ばれています。
本来、ボツリヌス菌は主に土の中や井戸水に含まれていることが多く、日常食品に含まれていることはありません。しかし、なかには例外もあります。
その代表的な食べものがはちみつです。
はちみつはミツバチが自然のなかで集めて作られるます。当然、どこから持ってくるかなんて誰にもわかりません。ゆえに、場合によっては芽胞というボツリヌス菌の種が含まれている場合があります。
しかも、ボツリヌス菌は外部からは見分けがつかないため、同じはちみつ製品であってもボツリヌス菌が含まれていたり含まれていなかったりします。一般的には5%程度と言われています。確実に危ないわけではないけれども結構危ない割合といったところでしょうか。私は5%って結構多いと思いますが。
また、はちみつ以外にボツリヌス菌が懸念される有名な食べ物として「黒糖」があります。自然界のサトウキビから作られる黒糖も、はちみつと同じくボツリヌス菌を完全に排除させることは困難です。
昔「はちみつと黒糖は小さい子には危ない」などと言われた記憶もありますが、最近はどうなのでしょう?
はちみつは有名でも、黒糖は意外に知られていないかもしれません。黒糖を使用されている家庭は少ないかもしれませんが、もし使用されていましたら乳児には与えないようにしましょう。
ボツリヌス菌は加熱しても無意味
ボツリヌス菌は熱に非常に強いため、通常の調理では死滅することがありません。ゆえに、はちみつを加熱しても意味がありません。
腸管出血性大腸菌やカンピロバクター、サルモネラ菌など多くの食中毒菌が75℃以上で1分以上加熱すると死滅するのに対して、ボツリヌス菌はまったく死にません。仮に100℃以上の温度で長時間加熱した場合、表面上の毒素はなくなりますが、芽胞という菌の種のようなものは生き延びます。そして、その菌が乳児の腸内に達すれば増殖して毒素を出すことがあります。
ボツリヌス菌が加熱に対して最強なのです。
また、ボツリヌス菌は嫌気性と呼ばれる性質を持っています。簡単に言えば酸素が「苦手」です。
それゆえ、サランラップなどで密閉された状態や、缶詰・ビン詰めなどは逆にボツリヌス菌が好む環境なので注意が必要です。「はちみつは容器に密閉されて酸素がないから安心」なんてとんでもない。むしろボツリヌス菌にとっては好環境です。
1987年10月以降、厚生労働省より通知が出されている
はちみつに関しては1987年以降、厚生労働省より注意喚起の通知が出されています。もちろん、今現在も継続して通知が行われています。
参考として以下に厚生労働省からの通知内容を引用しておきます。
赤ちゃんのお母さん・お父さんやお世話をする人へ
1. 1 歳未満の赤ちゃんがハチミツを食べることによって乳児ボツリヌス症にかかることがあります。
[乳児ボツリヌス症の発生状況]
乳児ボツリヌス症は、国内では、保健所が食中毒として報告した事例は1986 年以降3 例、医師が乳児ボツリヌス症として報告した事例は1999 年以降16 例あります。また、欧米でも発生しており、米国では毎年100 例以上の発生報告があります。
乳児ボツリヌス症の発生原因は、食品としてハチミツが指摘されていますが、ハチミツを食べていない例(国内では井戸水)も報告されています。2. ハチミツは1歳未満の赤ちゃんにリスクが高い食品です。
ボツリヌス菌は、土壌中などに広く存在している細菌です。ボツリヌス菌が食品などを介して口から体内にはいると、大人の腸内では、ボツリヌス菌が他の腸内細菌との競争に負けてしまうため、通常、何も起こりません。
一方、赤ちゃんの場合、まだ腸内環境が整っておらず、ボツリヌス菌が腸内で増えて毒素を出すため、便秘、ほ乳力の低下、元気の消失、泣き声の変化、首のすわりが悪くなる、といった症状を引き起こすことがあります。ほとんどの場合、適切な治療により治癒しますが、まれに亡くなることもあります。
なお、1歳以上の方にとっては、ハチミツはリスクの高い食品ではありません。3. ボツリヌス菌は熱に強いので、通常の加熱や調理では死にません。1歳未満の赤ちゃんにハチミツやハチミツ入りの飲料・お菓子などの食品は与えないようにしましょう。
一般的に、ハチミツは包装前に加熱処理を行わないため、ボツリヌス菌が混入していることがあります。また、ボツリヌス菌(芽胞)の耐熱性は120℃,4分とされており、通常の加熱や調理では死にません。
なぜ1歳未満が危険なのか?
ここまでのボツリヌス菌の説明を読んできて、1つの疑問が浮かんできたことと思います。
「なんで1歳未満の乳児は危ないのか?むしろ大人は大丈夫なのか?」
これに関して説明します。
まず、1歳未満の乳児が危険な理由ですが、一言でいえば「腸内の発達が不十分なのです」。1歳を超えてくると腸内が発達してきもすので、様々な細菌が腸内に留まるようになります。
「細菌」って聞くと何やら悪いイメージがありがちですが、なかには良い細菌も一杯います。それゆえ、ボツリヌス菌が入ってきても腸内の他の細菌が増殖を抑えてくれるのです。
これを正常細菌叢(せいじょうさいきんそう)と言います。簡単に言えば「変なよそ者がきたらやっつけてやる」と腸内の細菌たちが(結果的に)守ってくれるのです。
それゆえ、1歳未満の乳児の中でも、産後~6ヵ月くらいは特に注意が必要です。そのころの乳児はミルクや母乳以外の食べ物を消化する能力が全くないため、ボツリヌス菌が侵入したとしても「腸内に誰もいない状態」です。ボツリヌス菌のやりたい放題となります。
もちろん大人も感染する
腸内の細菌たちによって排除されていくボツリヌス菌ですが、もちろん大人でも感染することはあります。
それは主に「ボツリヌス菌が増殖した食べもの」を食べたときです。腸内の細菌は「ボツリヌス菌の増殖」を抑えてくれるだけです、決してボツリヌス菌を死滅させるわけではあります。
それゆえ、すでにボツリヌス菌が増殖した食べものを食べてしまうと感染します。大人がボツリヌス菌によって発生する病気は「ボツリヌス食中毒」と言われています。しかしこれに関しては乳児と状況が違うため、一般的に「乳児ボツリヌス症」と「ボツリヌス食中毒」は別物として扱われます。
乳児ボツリヌス症の症状は?
乳児ボツリヌス症の初期症状としては、
- 便秘
- よだれが多い
- 首のすわりが悪い
- 活気がない
- 哺乳不良
- 泣き声が弱い
- 顔面が無表情になる
- 対光反射の緩慢
- 眼瞼(まぶた)下垂
などが挙げられます。
このなかでも特に「便秘」による初期症状が有名です。はちみちなどを与えてしまった後に「5日以上便秘が続く」場合は、念のため乳児ボツリヌス症を疑ってみても良いかもしれません。乳児ボツリヌス症は便秘症状からはじまり、泣き声や哺乳不良などの活気系に発展、その後は全身の筋肉低下や頸部筋肉の弛緩などに至ります。
乳児ボツリヌス症は潜伏期間がとても長い
また、乳児ボツリヌス症は潜伏期間が3~30日ととても長いのが特徴です。それゆえ、ただちに影響があらわれないことがあります。
もしも誤って乳児にはちみつなどを与えてしまった場合は、1ヵ月ぐらいは様子を見ておくのが無難です。1週間ぐらいは何もなかったとしても、その後に乳児ボツリヌス症を発症することは十分に考えられます。
完治する場合がほとんどなので安心を!
以上、乳児ボツリヌス症について長々と説明してきましたが、かなり古くからの病気でもあり、治療法は十分に確立されています。
それゆえ、しっかりと病院で治療を受けましたら、後遺症もなく治療できる場合がほとんどです。その場合に重要になるのは日頃からの注意と早期発見です。
乳児ボツリヌス症の死亡率は一般的に2~3%と言われています。
他のボツリヌス症に比べると低い値ではありますが、それでも2~3%って私は結構高いと思います。十分に注意すべき値です。
少しでも赤ちゃんに対する危険を減らすためにも「はちみつ」「黒糖」などを1歳未満の乳児に与えるのは絶対にやめましょう。
また、はちみつ単品は見分けがつきやすいですが「はちみつを一部使用している食品」はわかりにくいので注意しましょう。「はちみつ入りスイーツ」や「はちみつ入りジュース」もこれに該当します。心配になりましたら食品裏面の注意書きを読んでおきましょう。
いかがでしたか?
乳児にはちみつを与えるのがいかに危険か伝わったでしょうか?